こんにちは調理師のfree-lifeです。
日々体にいい食品、食事、栄養のことを考えて料理を提供しています。
最近よく耳にする難消化性デキストリン、何となく体にいい感じがしますが、いったい何のことだろう?
とかどんな効果や働きがあるのだろうと思っている方も多いと思います。
今回はそんな難消化性デキストリンの歴史や効果また働きについてのお話になります。
難消化性デキストリンとは
難消化性デキストリンの構造
デキストリンとは日本語で「デンプン」のこと。
つまり難消化性デキストリンとは「消化されにくいデンプン」のことです。
難消化性デキストリンというのは、とうもろこし等の天然のデンプンから生まれた食物繊維のことで、消化されにくいデンプンのことをいいます。
元々トウモロコシなどの穀類や熟した果物などに含まれていますが、その中のトウモロコシのデンプンを焙焼して、アミラーゼ※で加水分解して難消化性成分を取り出したものが「難消化性デキストリン」です。
化学的に消化されにくい成分を取り出したもので、粘性や甘味は少なく、ほぼ透明で耐熱性・耐酸性に優れているのが特徴です。
難消化性デキストリンは、日本人の食生活が欧米化し、食物繊維の大切さが認知されるようになり、不足しがちな食物繊維を補う目的で作られた背景があります。
そして難消化性デキストリンは食物繊維に該当し、水に溶けやすい性質から水溶性食物繊維に分類されます。
またブドウ糖を分解する酵素の働きの一部をブロックしてくれるので、一部の糖が吸収されずに便に排泄されます。
このような作用があることで、糖質や脂肪の吸収を緩やかにする働きがあると考えられています。
しかし難消化性デキストリンを摂取したからといって、ケーキやお菓子を食べたことがなかったことに出来るような効果は期待出来ません。
またミネラルの吸収を邪魔しないため、多くの食品に応用されています。
※ アミラーゼ:人の唾液やすい臓にあるデンプンを分解する消化酵素
画像引用元https://grong.jp/dflife/about-indigestible-dextrin/
難消化性デキストリン誕生の経緯
戦後の日本は、アメリカの食文化の影響を受けて1970年代頃よりファストフード店が上陸して肉類の摂取量は増加、その結果脂質摂取量は急激に増えました
家庭の食事も肉や魚の動物性食品にに変わり始め、米離れといった穀類の摂取量低下とともに食物繊維不足が深刻化してきました。
ちょうどその頃、「消化されないが体内で良い働きをする栄養素」として食物繊維が注目されるようになりました。
そして1980年代に食物繊維不足改善目的で「難消化性デキストリン」が誕生しました。
難消化性デキストリンの働き
糖質の吸収をゆるやかにする
難消化性デキストリンの1つ目の効果は、食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。
食事から摂った炭水化物(糖質)は、体内でブドウ糖に分解されそのあと小腸で吸収されて肝臓へ送られます。
この小腸で吸収されるときに、ブドウ糖を分解する酵素の働きを難消化性デキストリンの働きによりブロックして、一部の糖が吸収されずに便に排泄されることで、糖質の吸収がゆるやかになり脂肪の蓄積を防いでくれます。
脂肪の吸収をゆるやかにする
難消化性デキストリンは血液中の総コレステロールや中性脂肪の吸収をゆるやかにしてくれます。
脂肪はリパーゼと呼ばれる酵素によって脂肪酸とグリセリンに分解されます。
食事由来の脂質は、腸内で消化吸収される過程で消化酵素の1つのリパーゼにより分解された脂肪や後胆汁酸などと共に、ミセルという親水性の非常に小さい分子に取り込まれ腸内を移動しますが、難消化性デキストリンを食事と同時に摂取することにより、ミセルが壊れるのを抑制してくれます。
ミセルが壊れる事によって脂肪酸やモノグリセロールが放出され脂肪がつきやすくなります。
しかし難消化性デキストリンを食事と一緒に摂取する事により、ミセルが壊れるのを抑制する効果があるので、脂質の吸収を遅らせて一部の脂肪が吸収されずに、便に排泄され食後血中中性脂肪の上昇を抑制してくれます。
簡単に言うと脂質の吸収を抑えてくれるという事ですね!
画像引用元https://grong.jp/dflife/indigestible-dextrin-diet/
腸内環境を整える(プレバイオティクス)
プレバイオティクスとは、善玉菌を増殖・活性化して腸内環境を改善する難消消化性食品成分のことです。
代表的な食品成分には、イヌリンやオリゴ糖があります。
このプレバイオティクス効果が、難消化デキストリンなどの水溶性食物繊維にもあることがわかっています。
腸内には100兆個を超える腸内細菌が存在しており、善玉菌や悪玉菌、日和見菌といった3種類の菌がバランスを保ちながら腸内環境を維持しています。
食物繊維は消化されにくい働きから、腸内の老廃物を掃除しながら移動します。
その後大腸に届いた食物繊維は善玉菌のエサになって発酵され、酢酸やプロピオン酸など短鎖脂肪酸を生成します。
この短鎖脂肪酸が腸内環境を整えるために重要な働きをしています。
短鎖脂肪酸は腸内環境を適度な酸性に保ちながら善玉菌の見方をして悪玉菌をやっつけてくれます。
特に短鎖脂肪酸のなかでも酢酸には悪玉菌を退治する殺菌作用や、増殖を抑える静菌作用があると考えられています。
海外の研究で、難消化性デキストリン(10g、15g、20g)を14日間摂取した結果、15g摂取した群で、摂取する前と比較するとウェルシュ菌の発生が抑制でき、さらに20g摂取した群において、便が酸性に傾いたという報告があります。
このように難消化性デキストリンを摂取することで、腸内を酸性に傾けてウェルシュ菌などの悪玉菌を抑制できる働きが期待できるかもしれません。
また短鎖脂肪酸はエネルギー代謝を亢進したり、脂肪の蓄積を抑える働きがあるとわかっています。
その他、食欲を抑えるといわれるホルモンの分泌を促進するともいわれています。
ビフィズス菌などの有益な腸内細菌を増やせば、短鎖脂肪酸が増加し、腸から体を元気にしてくれるのです。
ミネラルの吸収を高める
体内にごく微量存在するミネラル(人体の約3%)。わずかであっても全身のいたるところで働く栄養素です。
ミネラルは体内で合成することができないため、食事からとることが必須です。
ミネラル(無機質)とは、ビタミンと同様に体の機能の維持・調節に欠くことのできない栄養素です。
とても少ない量で重要な働きをするところはビタミンと同じですが、ビタミンと異なることは、ミネラルは体の構成成分にもなっているという点です。
またダイエットの鍵となるエネルギー代謝に関わっており、糖質や脂質などの三大栄養素からエネルギーをつくるときに、サポート役となるのがミネラルです。
微量ながらも体の健康維持に欠かせない栄養素で、カルシウム、鉄、ナトリウムなどの16種類の必須ミネラルがあります。
ミネラルの主な働きとしては、骨・歯など体の構成成分になったり、体の調子を整える働きがあります。
さらに皮膚やコラーゲンをつくるサポートも担っており、ミネラル不足が原因でお肌の調子が悪くなったり、せっかく瘦せたのにしわだらけ!
なんてことになっては瘦せた意味がありません。
またミネラルは、エネルギー消費を高める筋肉の維持や働きにもかかわっていますので、急激な食事制限によるミネラル不足には気お付けなければいけません。
低粘度で腸内細菌に利用されやすい難消化性デキストリンのような食物繊維は、大腸でカルシウムやマグネシウム、鉄などのミネラルの吸収を高める働きがあることが分かっています。
難消化性デキストリンの安全性は?
古くから食品に利用されてきた難消化性デキストリンですがその安全性はどうなのでしょうか?
とうもろこしのデンプンから作られた水溶性食物繊維の難消化性デキストリンは、アメリカの政府機関であるアメリカ食品医薬品局(FDA)では、難消化性デキストリンの1日の摂取量の上限を明確に定める必要がないほど安全な食品素材であるとしています。
さらに過去の安全性を調べた試験結果では、特に問題となるような症状は確認されず、安全であると報告されています。
またその他の臨床検査値、特に血清たんぱく質、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Fe(鉄)などのミネラル濃度について、難消化性デキストリンの摂取が原因となる変化はまったく認められなかったと報告されています。
まとめ
難消化性デキストリンは色々な効果が期待できる安全な食物繊維です。
しかしこれを摂取してからと言って、劇的に血糖値やコレステロールが改善するものではありません。
やはり血糖値やコレステロールなどは普段の生活習慣が大きく影響してきます。日頃の生活習慣にしっかり野菜や運動取をとりいれることが大切です。