こんにちは調理師のfree-lifeです。
日々体にいい食品、食事、栄養のことを考えて料理を提供しています。
先日お客様に、難消化性デキストリンで血糖値の上昇を抑えることが出来るの?
とい質問を受けました。
難消化性デキストリンは様々な効果が期待される特定保健用食品ですが、その中の一つに血糖値の上昇を緩やかにする効果があります。
しかし効果があったという方もいますが全くなかったという方もいるのも事実です。
さて難消化性デキストリンは、実際に血糖値の上昇を緩やかにする効果があるのでしょうか?
今回は難消化性デキストリンと血糖値のお話しになります。
血糖値とは
血糖値とは血液中のブドウ糖の濃度をいいます。
ごはんやパンなどの炭水化物を食べると、唾液や胃腸の消化液によってブドウ糖に分解されます。
さらに分解された糖は腸で吸収されたあと、血液を通って全身でエネルギーとしてつかわれます。
この血液中を流れるブドウ糖のことを血糖値といいます。
血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されて、血液中のブドウ糖が筋肉や肝臓、脂肪組織に取り込まれ血糖値は下がり、一定の範囲で保たれています。
炭水化物の摂りすぎや、早食いなど肥満になるにはいくつかの理由がありますが、血糖値が急に上がったりすることでインスリンが分泌され、使いきれなかったインスリンは体脂肪として体に取り込まれ、肥満の原因につながります。
またこの様な状態が長く続くことにより、血管にダメージを与えてしまったり、糖尿病の原因になります。
血糖値の上昇をゆるやかにするための方法
血糖値の上昇をゆるやかにするための方法はいくつかあり
- 炭水化物の過剰摂取を控える
- ゆっくり食べる
- 野菜や大麦など食物繊維をとり入れる
- 野菜を先に食べる
などが挙げられ、日頃から意識することが大切です。
そしてこの他に「難消化性デキストリン」に血糖値の上昇をゆるやかにする働きがあるというのが今回お話しです。
難消化性デキストリンとは
難消化性デキストリンというのは、とうもろこし等の天然のデンプンから生まれた食物繊維のことで、消化されにくいデンプンのことをいいます。
元々トウモロコシなどの穀類や熟した果物などに含まれ、化学的に消化されにくい成分を取り出したもので、粘性や甘味は少なく、ほぼ透明で耐熱性・耐酸性に優れているのが特徴です。
難消化性デキストリンは、日本人の食生活が欧米化し、食物繊維の大切さが認知されるようになり、不足しがちな食物繊維を補う目的で作られた背景があります。
またミネラルの吸収を邪魔しないため、多くの食品に応用されています。
そして難消化性デキストリンは食物繊維に該当し、水に溶けやすい性質から水溶性食物繊維に分類されます。
難消化性デキストリンの2つの健康作用
難消化性デキストリンの1つ目の効果は食後の血糖値の上昇を抑える効果があります。
食事から摂った炭水化物(糖質)は、体内でブドウ糖に分解されそのあと小腸で吸収されて肝臓へ送られます。
この小腸で吸収されるときに、ブドウ糖を分解する酵素の働きを難消化性デキストリンの働きによりブロックして、糖の吸収を抑えてくれることで、食後の血糖値の上昇をおだやかにしてくれます。
難消化性デキストリンを食事と共に摂取したヒト試験で、その作用は確認され
ています。
健常成人男性10名に対してうどん定食と一緒に難消化性デキストリン5g配合したお茶を摂取した場合、普通のお茶と一緒に摂取したときに比べて食後の血糖値の上昇がおだやかになる事が認められました。
食後の血中中性脂肪上昇抑制作用
難消化性デキストリンの2つ目の効果は、食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにする作用です。
中性脂肪は「本来は私たちのカラダを動かすエネルギー源として働くものです。
しかしエネルギーとして使い切れずに余ってしまったものは、カラダに脂肪として蓄えられることになりそうすると肥満の原因につながります。
お腹周りに脂肪がついたと感じる方や脂肪の多い食事を摂りがちな方などにも、難消化性デキストリンをためしてみることをおススメします。
こちらも健康作用①と同様にヒト試験で、その作用は確認されています。
(参考:難消化性デキストリン配合茶飲料の脂質摂取後の血清中性脂肪上昇抑制効果。薬理と治療Vol 36 No5 P445-451 2008)
健常成人13名で行った実験では、ハンバーガーとポテトと一緒に難消化性デキストリン5gを配合した飲料を摂取した場合、配合していない飲料を摂取した時と比べると食後の中性脂肪値の上昇がおだやかになる事が認められました。
難消化性デキストリンの安全性は?
古くから食品に利用されてきた難消化性デキストリンですがその安全性はどうなのでしょうか?
とうもろこしのデンプンから作られた水溶性食物繊維の難消化性デキストリンは、アメリカの政府機関であるアメリカ食品医薬品局(FDA)では、難消化性デキストリンの1日の摂取量の上限を明確に定める必要がないほど安全な食品素材であるとしています。
さらに過去の安全性を調べた試験結果では、特に問題となるような症状は確認されず、安全であると報告されています。
またその他の臨床検査値、特に血清たんぱく質、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Fe(鉄)などのミネラル濃度について、難消化性デキストリンの摂取が原因となる変化はまったく認められなかったと報告されています。
(参照:臨床栄養 Vol.83 No.3 P301-305 1993)
過大な期待は禁物です
今回のお客様からの質問にもあったように、難消化性デキストリンを飲んだら血糖値は改善しますか?」「痩せますか?」などというように、あたかも難消化性デキストリンが魔法のやせ薬のようなイメージを持っている方がいますが、糖質の吸収が緩やかになるといっても過信してはなりません。
そしてポイントとなるのが
消化性デキストリンは、一部の糖が吸収されにくくなるのであって、全ての糖が吸収されなくなるのではないという事を覚えておいてください。
暴飲暴食しても大丈夫という話ではありません。
多くの食物繊維をとり入れよう
食物繊維を摂る事により糖尿病や循環器疾患など、病気の予防効果や死亡リスクの低下など様々な効果があると言われています。
日本人約9万人を17年間調べた研究では、食物繊維が一番多いグループと最も少ないグループを比べた結果、なんと死亡率が男性では23%、女性では18%も低かったと報告されています。
そして食物繊維摂取量の最も高いグループは、1日約20g程度摂取しており、日本人の食事摂取基準でさだめた成人男性では1日21g以上、成人女性では1日18g以上が望ましいとされていてこの基準にほぼあっています。
しかし現状の日本人の平均食物繊維摂取量は1日14.4gで圧倒的に不足しています。
不足なってしまった原因は穀類や芋類、豆類の摂取量の低下があります。
戦後直後までは食料難の時代でもあり、麦飯や芋が主な栄養源で食物繊維摂取量は1日20gを超えていましたが、1950年頃以降、食が豊かになるにつれて麦飯よりも白米、手頃なファストフードなどが好まれはじめ、食生活も欧米化してきて食物繊維摂取量が低下してしまいました。
このような日本人の食物繊維不足を解決するために開発されたのが「難消化デキストリン」です。
手軽に摂取できることなどから現代社会には合っていると思いますが、これだけに頼る事はまちがいです。
食物繊維には水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の2種類があり、難消化性デキストリンは、水に溶けやすい性質がある水溶性食物繊維に分類されます。
二つの食物繊維をバランスよく取り入れる事が大切な為、野菜や豆類、芋類など多くの食品からとり入れることが大切です。
またこれらの食品には、ビタミン・ミネラルや抗酸化物質など、食物繊維以外の栄養素も一緒に摂取できるので一石二鳥ですよ。
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まとめ
難消化性デキストリンは血糖値の上昇を抑える効果があることが分かりました。
しかしこれを摂取しているから糖質を全て吸収してくれるとか、太らない又は瘦せるなどの効果を、過剰に期待することはお勧めできません。
あくまでも普段の食事に不足分を補うという考え方がいいと思います。
また血糖値の改善には、バランスのよい食生活に加えて運動習慣も大切です。「食事×運動」を基軸に健康的な生活を心がけることこそが、血糖値改善ならびに健康への近道になります。
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